裏革について

久しぶりにニットカーディガンに袖を通しました。柔らかい色、優しい雰囲気のニットを着ていると「紳士的に優しい振る舞いをせねば」と意識してしまいます。この手のニットを着た人で悪い人はいないでしょうから。

 

今回は靴の裏革についてのお話です。

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例外もありますが、革靴は表革と裏革の間に芯材(つま先と踵)が入った状態で成形されています。今までご紹介したNEW YORKやOLD ENGLANDといった革は表革として使う素材です。

ブーツ以外の靴では、裏革はこのように構成されています。(2枚とも型紙の画像です)

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こちらが先裏という靴の前方部分。足の甲部から指が触れる部分です。

 

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こちらが腰裏という靴の後方部分。主に踵周りに触れる部分です。

裏革は吸汗性、耐摩耗性があり、できるだけ靴下に色移りしない素材がベストです。

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delightful toolでは先裏には豚革を。

 

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腰裏には牛革を使っています。

豚革は吸汗性、耐摩耗性、コストパフォーマンスに優れた素材で、靴の裏革に非常に適しています。しかし革としての綺麗さでは多少劣る部分があるため、腰裏には牛革を使っています。靴としての機能性と仕上がりのバランスを考慮して、このような組み合わせを採用しました。

裏革として使っている豚革、牛革は「著名なヨーロッパタンナーの…」といった類のものではありませんが、実際に履いてみて吸汗性や耐久性を確認した上で選んでいます。コストをかけすぎることなく、できるだけ快適に長く愛用できる仕様を心がけました。

 

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数日前、靴の製造工程を解説した本を置いてみました。靴として形になってしまうと見えにくい部分などは、この本や実際の型紙などを見ながら店頭でもお話できればと思っております。実は見えにくい部分にこそ、靴として大切な要素や作り手の考えが詰まっていますので。

中底について

ブログの冒頭では天気の話をしていることが多いです。過去の記事を見直してみて自覚しました。

「急に寒くなりましたね」「今日は気持ち良い青空ですね」と日常で交わす言葉と同じ感覚で書いているのと同時に、私がその日の天気を結構気にしている証拠なのだと思います。どうも私は天気のことが気になりやすいようです。人それぞれの「天気を気にしている指数」みたいなものがあれば面白いかも、なんてくだらないことを考えてしまいました。

過去の記事を見直してそんな天気のことに気がついたのは、もちろん副産物です。オーダーシューズについて、どこまでお話できていたのかを確認することが記事を見直した目的。

お選びいただける革、底材、製法といったお話はできてきましたので、ここからはもう少し靴の内部や細かなことのお話をしていきたいと思います。

 

今回は革靴の生命線のひとつ、中底についてのお話です。

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中底とは靴を履いた時に足の裏が触れるパーツ。靴によっては革以外の中底もありますが、革靴であればタンニン鞣しの良質な革を中底に使うことが望ましいと思います。

タンニン鞣しの革を中底に使うことで、吸汗性、履き心地が優れた革靴になります。革の中底はスポンジのような柔らかさはありませんし、最初は硬く感じられるかもしれません。しかし使い込んでいくうちに革の中底は足の裏の形状に変化し、履く人のための専用インソールとなります。「履き込んだ革靴は手放せない」「履いていくうちに革靴は馴染んでくる」と言われるのはそのためです。(実際には中底の下にあるコルクなどの部材も変化し、足馴染みに影響します)

とはいえ革の中底は靴の製法によって厚みが変わりまして、そのメリットを最大限に享受できるのは厚みがある中底です。

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こちらはdelightful toolの9分仕立て(ハンドソーンウェルテッド製法)で使われる、厚さが5ミリの中底です。

 

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こちらはマッケイ製法で使われる、厚さが3ミリの中底。9分仕立ての中底に比べて薄くはなりますが、それでも中底が良質な革であることのメリットは感じられます。

革靴というと本体に使われる革(甲革)に注目が集まりがちです。甲革に品質が劣る革を使うのは論外ですが、見えないところだからと中底に適当な素材を使ってコストを下げるのは問題有りです。甲革に良い革を使うのであれば、中底もそれに見合ったきちんとした革を使うべきです。大切なのは全体のバランスで、良い甲革には良い中底の組み合わせが必要です。そうしなければ長く持つ革靴には仕上がりませんので。

delightful toolの靴に使われている中底は、職人さんも私も「これなら間違い無い」と自信を持って選んだ革です。本体に使われる革と同様に中底も店頭で保管しておりますので、是非お手に取ってご覧ください。

革底(レザーソール)

本日は底材紹介の第6回。革底(レザーソール)です。

delightful toolでは、比較的返りが良いイタリア製の革底を使用しています。

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画像の通り「これぞ革靴!」と感じさせる綺麗な仕上がりが、革底が持つ最大の魅力だと思います。

 

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あらかじめ入れた切り込みの中に底縫いをかけることで、縫い糸は露出しない仕様。(メス入りのマッケイ製法)

 

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ヒールのトップピースは革とゴムのコンビタイプ。クサビ型、ダヴテイルと呼ばれる形状のトップピースをつけています。(ゴムのみのトップピースもお選びいただけます)

グリップ力や耐摩耗性、クッション性であれば、革底よりもゴム底やスポンジ底の方が優れています。それでも現代の革靴に革の底材が使われているのは、ゴム底やスポンジ底では出せない「革靴らしさ」「革靴の良い緊張感」を生み出せるからだと考えています。以前お客様から「革底の靴で歩いた時、コツコツという音で背筋が伸びる」といったお話を伺った時には、非常に納得できました。

やはり大切なのは、その靴を履くシチュエーション。普段履きとはいえ、仕事でビシッと履く革靴であれば革底を選ぶのも良いですね。

ビブラム社の2060ソール

こんなにすっきりした「雨のち晴れ」ってあるのだろうかと嬉しくなります。気持ちの良い午後です。

今回は底材紹介の第4回。ビブラム社の2060ソールです。

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スポンジソールのため厚みがあっても軽く、クッション性が高い底材。もう少しカジュアル色が強い靴に使われることが多いかと思いますが、このサンプルシューズは「靴本体とのギャップが楽しいかな」と考えてこのような組み合わせになっています。

 

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真横から見ると、この底材が持つボリューム感がわかりやすいです。この2060にはよく似た見た目の2021という底材があるのですが、実はそちらに比べればすっきりしています。

 

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ヒール部分は本体と一体成型のユニットソールです。

2060ソールはデザインや革との合わせ方次第で、「外し」「遊び」の色が出ます。ちょっと変化球のカジュアル靴をご希望でしたら、特にお勧め。もちろん機能面でも安心の底材ですので、気になる方は店頭でご相談ください。

オーダーシューズでお選びいただける底材のご紹介は今回で一区切りとさせていただきます。あと2つご紹介する予定の底材があるのですが、そちらはまだサンプルが届いておりませんので。サンプルの到着まで、もうしばらくお待ちください。

ダイナイトソール

「気温差5度で衣服一枚分」と言われているそうです。恥ずかしながら私は昨日流れていたラジオで初めて知りました。今日の東京、予報での最高気温は15度。外に一歩出ると、コートを一枚羽織って正解と思う寒さでした。

 

さて、昨日に続きオーダーシューズでお選びいただける底材のお話です。今回はこちらの靴に使われているダイナイトソール(ハルボロラバー社のスタッドソール)について。

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スタッドstudded(正確にはスタッデッド)ソールの名前通り、丸いポイントが点在しています。新品のうちは接地部分の面積が狭いため「ゴム底の割に滑るな」と感じられるかもしれませんが、しばらく履いて底が若干すり減ってくると落ち着くはずです。そこからがダイナイトソールの本領発揮でグリップも効いてきます。接地感は硬いものではなく、衝撃吸収にも優れています。

 

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またゴム底ながら見た目がすっきりと仕上がります。これもダイナイトソールの良さです。

 

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ヒール部分は独立しています。ある程度すり減ったところで、トップピースと呼ばれる部分のみの交換修理ができます。

「綺麗なバランスで靴をオーダーしたいけれど、革底(レザーソール)は滑るから…」とお考えであれば、ダイナイトソールは良い選択です。多くの革靴に採用されているのも納得の底材です。

※ダイナイトソールは底に縫いをかける際の兼ね合いで、マッケイ製法ではお選び頂けないことがあります。

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