必要な手間暇

必要な手間暇をかける。

靴に限らず、何かを形にする際にはとても重要なことだと思います。闇雲にではなく、その手間暇は本当に必要なのかを考える。

 

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靴を木型に沿わせて成形する作業”つり込み”は一足一足手作業で行います。革の状態を見極めながら、手でつり込むことで木型のラインをしっかりと再現した、優しい履き心地の靴に仕上がります。

 

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靴本体(アッパー)と本底(ソール)を縫い合わせる作業”出し縫い”はミシンで行います。お勧めする本底がラバー中心であることからも、出し縫いを手で行うことは効率が悪く、私が考える製品価格とのバランスも悪くなってしまいます。

私が尊敬する靴の先輩は「人の手と機械に優劣はない」とおっしゃっていました。それぞれの人が目指す靴から考えて、この工程にはどちらが適しているのか。どちらも目指す靴を作るための手段。そういうことなのだと思います。

delightful toolの靴は、現段階でベストと思われる手間暇をきちんとかけています。とはいえこのベストも少しずつ変わっていくことはありますし、時とともに深化していく必要もあります。靴の製作を担ってくれているANCHOR BRIDGEの村橋さんと常に話し合いながら、みなさまのより良い一足につなげていきたいと考えています。

足に馴染む

革靴は履いていくほどに、足に馴染んでいきます。これは革で作られているからこその良さです。

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足の裏が直接触れる中底というパーツ。ハンドソーンウェルテッド(9分仕立て)ではこのような革を使います。この厚みのある革が汗をしっかりと吸い、履いていくほどに足の裏の形状に変化していきます。これだけしっかりした中底を加工して、靴としての強さと適度な柔らかさを実現できるのはハンドソーンウェルテッド製法の強みです。

靴の製法にはっきりとした優劣は無いと考えていますが、やはりハンドソーンウェルテッドは素晴らしい製法です。

ハンドソーンウェルテッドで作られた靴は、手間暇がかかる分だけ価格は高くなります。その一方でかけた手間暇の分だけ靴として必要な強さ、柔らかさなど、あらゆる要素を高いレベルに仕上げることができると考えています。

今までのブログでは「マッケイ製法の良さ」を中心にお伝えする機会が多かったです。今後はハンドソーンウェルテッドの良さも、一つずつしっかりとお伝えしていきたいと思います。

革靴の吸湿性

革靴の良さについて荒井弘史さんが書いた記事(青山FANS.のブログ)を読みました。

革は可塑性がある(足に馴染む)

革は吸湿性に富む(足が蒸れにくい)

革靴の良さを感覚だけでなく、論理的にきっちり述べているところがさすが荒井さんです。

 

手前味噌ですが、delightful toolの靴もこの点はきちんと意識しています。革が持つ吸湿性の高さが靴にしっかりと反映されるよう、特に足が直接触れる内側には注意しています。

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裏革(ライニング)は、吸湿性・耐摩耗性・見た目・コストのバランスを考慮した素材を選んでいます。足の前方が触れる部分は豚革、足の後方が触れる部分は牛革(どちらも国産)です。ヨーロッパ製の素晴らしい裏革もあるのですが、コスト面でそちらは見送りました。

 

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また足の裏が触れる中底(インソール)はこのような革です。職人さんとの相談や試してみた結果、価格と機能が比例しやすい部材であったためそれなりに高価なパーツ(高級な注文靴にも負けないと思います)を使っています。

荒井さんが述べていたこの2点。パッと見でわかることではありませんが、私も荒井さんのようにきちんと伝えていきたいと思います。

誰かの暮らしに

西野カナさんの曲には「こんな歌があったら誰かの暮らしがちょっと良い感じになるんじゃないか」という視点がある。常に誰かの暮らしのBGMになる…

昨晩、音楽番組の関ジャムで、作詞家・音楽プロデューサーのいしわたり淳治さんがおっしゃっていました。いしわたりさんが、西野さんのHave a nice dayという曲を2016年のベストソングとして挙げた際のコメントです。

 

この言葉にハッとしました。音楽、まして西野さんの曲とは離れた世界ですが、delightful toolの革靴も同じではないかと。

「こんな靴があったら誰かの暮らしがちょっと良い感じになるんじゃないか」

今まで考えていたことを言葉にしてもらった感覚でした。

 

足の押さえはしっかり効いているけれど、指先が楽なフィッティングの靴があったら。

十分な試し履きができる靴があったら。

必要な手間暇をかけて一足一足作られた靴があったら。

 

ちょっと足取りが軽くなって。

ちょっと自分の装いに自信が持てて。

 

delightful toolの革靴からも、誰かの暮らしにそんなちょっと良い感じを生み出せれば。大切な視点を思い出させてくれた、非常に素晴らしい番組でした。

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副資材の質感

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店頭に並べた洋服や雑貨の生地を撮ってみました。コットン、ウールなど、素材は違えどざっくりした風合いの生地がずっと好きです。少し華やかな生地に惹かれた時期もありましたが、戻ってくるのは必ずここ。

素朴さ、暖かさ。見て触って、これが感じられるかどうか?

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革であれば、やはりこの質感です。

 

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靴に使う副資材の金属でも同じ。私の好みもありますが、日常を支える足元にはこのようなパーツが合うと思うのです。

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